【『宅配がなくなる日』(松岡真宏 山手剛人)を読みました 】
19:58 15 10月
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『宅配がなくなる日』(松岡真宏 山手剛人)を読みました。
ヤマト運輸に代表される宅配便の話で始まりはしますが、主に語られるのはサブタイトルの「同時性解消の社会論」です。
時代状況の変化とテクノロジーの発達によって、「時間価値」(費やした時間によって生み出される便益や効用)が高まっていることが、人々の行動を変化させている、という仮説に基づいて議論が展開されます。人々が時間価値を追求する結果、時間の効率化と快適化がより強く求められるようになった。また、モバイル端末の普及によって、いつでもどこでも仕事も生活もできるようになったことで、同時性(=時間と空間を他者と共有すること)のコストが大きく高まってしまったと論じられます。
かつては同じ時間を共有する電話というコミュニケーションが、メールの登場で同時性が解消されることで大きく変わってしまったのと同じような変化があらゆる場面で起きている。そして、テクノロジーが、時間と空間の共有を限りなく細切れにしていくことで、様々な生産性の向上が実現する、と筆者は語ります。
シェアエコノミー、副業の重要性、流通革命、AIと人間の棲み分け、と言った今ホットな論点が、「同時性」というキーワードを切り口にダイナミックに論じられ、痛快でした。
僕は最近、流通の3つの機能(物流、決済、情報)を要素分解し、それぞれを突き詰めて再構築することを、流通のモジュール化と呼んで考えています。この本の中でも、消費者の購買における選択・支払い・受け取りという3つの要素について、同じ視点から論じられていて、とても勉強になりました。
ぜひご一読下さい。
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