農業後継者に青年就農給付金支給を支給すべきでない3つの理由
農業経営者15年2月号に寄稿したもの
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僕は、青年就農給付金制度そのものに反対の立場です。農業で成功できる人の多くはこの制度がなくてもやれるであろう一方、成功できない人は補助金があろうとなかろうと無理だからです。すなわち給付金制度は「青年の就農意欲の喚起と就農後の定着を図る」という政策目的に照らして、効率のいいやり方ではありません。
とりわけ、農業後継者に対しての支給は、無駄金になる可能性が高い。以下にその理由を述べます。
理由1:「就農意欲の喚起」に繋がらない
「事業30年説」という言葉が示すとおり、ビジネスには寿命があります。事業にまだ力がある農業経営体には当然ながら助成の必要はありません。したがって就農給付金は、経営がうまくいっていない農家の後継者が、新たな成長事業を立ち上げることに寄与しなければ意味がありません。その場合は投資が必要ですが、農業は融資制度が充実していて、とても金が借りやすい産業です。一方、生活支援を主目的にした青年給付金は、額も支給方法も投資には使いにくいもので、困っている農業後継者の就農を後押しすることになりません。
理由2:「就農後の定着」に繋がらない
親元で就農する、というのは、経済的に最もリスクの少ない事業継承です。多くの場合、家も土地も設備もネットワークも既にある状態なのですから。農業後継者は、就農時からビジネスそのものに集中できる環境にあり、彼等が必要としているのは、事業の中身へのコンサルティングです。その意味で給付金の支給はピントのボケた支援になってしまいます。
理由3:競争政策として間違っている
農業後継者は相続税が免除されており、新規就農者に比べて有利な条件で農業を始めることが出来ます。その優位性は圧倒的で、新規参入者に年150万程度の給付金を支給しても、およそ埋まることはありません。「業界の活性化」が目的なのであれば、新しいアイデアを持って参入するプレイヤーを重点的に支援し、既存の農家に「刺激」が与えられることこそ重要です。もともと差が付いている戦闘力をさらに広げる施策は活性化に繋がらないばかりか、参入を検討している人が馬鹿馬鹿しくなってあきらめてしまうという逆効果を生みかねません。
護送船団方式で農家が誰でも食っていけた過去は過ぎ去り、もう二度とそんな時代はやってきません。それでも農業をやりたい人はいて、そういう人は生き残る術を自ら考えます。必要のない人に下手にお金を出すことは、本当にやりたい人・やれる人の選別に繋がらないというマイナスの効果を重く見るべきでしょう。
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