夏の長野研修旅行レポート1 佐久市 ベジアーツ
09:18 24 8月
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by Boss
お盆のまっただ中、佐久市の農事組合法人ベジアーツの山本裕之さん(34)を訪ねました。
あいにくの曇り空でしたが、浅間山を背に開ける佐久平の雄大な風景は、ため息が出るほど。この景色はずるいな、と改めて思います。標高500-1,300mの冷涼な気候はやはりレタスにぴったり。農協の大型集荷施設も昭和40年代には出来ています。気象条件を生かした適地適作が、立地の良さと相俟って、40年に渡って競争力を持ち続けているのはやはりすごいな、と。理由がなければレタス、になるのは当然のことだろうと思います。農協以外の民間の集荷業者も数多く存在しており、基本的にはつくれば売れるという状況のようです。今ですらそうなのですから、かつてはどれだけ鼻息の荒い地域だったかは想像に難くありません。
お父さんの代から続く中間流通の仕事を経て、生産に携わっている山本さんの事業で驚くのは、その成長スピードです。6期目の今まで急拡大を続けています。現在20ha。最近では農地の確保がネックになっているようです。実際、圃場を見せて頂くと、条件のいいところばかりではありません。しかも、すぐ隣に耕作放棄された畑もあったり。人も集めて、どんどんやると言っている人に農地がうまく集まらないのは、率直にもったいないと思います。「やる気のある担い手に集約」と一言で片付けられがちですが、受ける方の経営的な負担は大変なものです。後継者のいない生産者は、いずれ農地を手放すことになるわけですが、どういうタイミングで手放すかは、貸し手の自由になってしまっているわけです。しかし渡すと言われたときには、地域の実情から言っても、やめると言ったら受けては受けざるを得ない。そんな状況では、投資のしようがありません。先を見据えて、人員と設備を無駄に抱えておくしか方法がありません。全国の水稲でも同じ事が起きています。中間管理機構は、こういう生産者を応援する機能を果たして欲しいと思います。
山本さんは経営的に大きな目標を掲げてお仕事をされています。お話を伺っていて強く感じたのは、先が見えている強さです。お父さんがされている流通の会社の規模をつぶさに見ているので、このくらいまではこういう感じだろうというのが見えている。それが今の生産規模の10倍とかなわけです。今の10倍になった時の姿がイメージできている。だから、淡々と拡大していける。村上龍が以前に語っていたことで、デビュー作が130万部も売れてしまったから、その後の作品がどれだけ売れても、「あ、まだ全然だ」と思うようになってしまった、という話を思い出しました。
軍の訓練で、これから何km走るのか伝えて走らせる時と、あえて伝えないで走らせる時があるそうです。同じ距離を走らせても、後者の方が兵ははるかに疲れる。初めての場所に行くときに、行きは遠く感じるけど、帰りは早いのと同じですね。
急成長にも驚かない、先が見えている強さ。今回一番印象に残ったことです。
もちろん、とはいえ、実際には大変なご苦労だと思います。レタスは5月から出すわけですから、長野としてはかなり早い。そこはリスクを取って2作回しているんですね。斜度がきつい分、大雨が降れば畝が流れる。冬場にできることがほとんどないなかで人を抱える、失敗の許されない感は、周年で栽培が可能な平場とは次元の異なるプレッシャーです。4ヶ月後には雪に覆われる圃場を見ながら、そんなことに思いを馳せました。
人の問題なども含めて、また勉強させて頂ければと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いします。
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