農作業安全研修
11月18日に水戸市の農林水産研修所つくば館水戸ほ場で開催された、茨城県県南農林事務所による「農作業安全研修」に参加しました。刈払機の安全操作やトラクターの安全走行に関する実習と、農作業事故の実態・事例と安全対策のポイントについての講義を受けました。
■農作業事故の実態
建設業や製造業の死亡事故は年々減少する傾向にあり、全産業の死亡事故件数は40年前に比べて5分の1以下に減少してい ますが、農作業の死亡事故件数は40年間ずっと350~400件程度でほとんど変わっていません。近年では、農作業死亡事故者数が、危険業種といわれる建設業を上回っている年もあります。
理由については講義では触れられませんでしたが、他産業では、事業主が事故の責任を追及されるためコストをかけて安全対策が行われるのに対し、個人・家族経営が多い農業では個人の不注意ということで終わってしまい、問題が大きくなったり安全対策が重視されることが少ないことが考えられます。
農水省の調査結果によると、平成24年の農作業死亡事故は350件で、乗用トラクターによるものが30%、歩行型トラクター 11%、農用運搬車11%。
原因は、乗用型トラクターによる事故の68%が転落・転倒、歩行型トラクターによる事故の55%が機械と樹木等との挟まれ。
農業機械による「傷害事故」では、1位:刈払機20%、2位:乗用型トラクター16%、3位:歩行型トラクター14% 。
以上の状況を踏まえ、刈払機とトラクターについて実習が行われました。
■刈払機の安全操作
特に以下の点に注意するよう指導を受けました。どれも基本的なことですが、面倒くさがらずにやることが大事だと改めて感じました。
・作業前に必ず点検。特に刈刃の損傷や固定ボルトのゆるみがないかどうか。
・必ず現場を確認し、障害物を取り除く。
・右から左へ刈り取る。もし右へ刈って障害物に当たるとキックバックで大きく振り回され非常に危険。
・服装に気をつけ、防護具を活用。特に安全靴、保護メガネ、防護帽はつけてほしい。
実習で使った刈払機は、スロットルレバーが「トリガー式」。初めて見ました。
従来の固定式スロットルレバーは機械が手から離れても刃が回転し続けてしまうのに対し、トリガー式はレバーを握るタイプで、手から離れるとレバーが戻り、刃への動力が遮断されるのでより安全です。現在製造されている刈払機はほぼ全てトリガー式に切り替わっているようです。
実習で着用した防振手袋。手に伝わる振動がかなり軽減されてしびれにくく、これは良かったです。
■トラクターの安全走行
前述の通り、乗用型トラクターの死亡事故の原因の7割が転落・転倒であることを踏まえ、傾斜面と傾斜路の危険体験ができる設備を実際に走行しました。
傾斜面の危険体験
15度の斜面をトラクターで走行します。途中に設置された凹凸部分では車体が25度以上に傾き、転倒寸前の状態を体感しま した。絶対に転倒しない安全装置がついていても恐怖を感じました。実際の畑では絶対に傾けてはいけない角度だと感じました。
傾斜路の危険体験
20度の登坂と15度の降坂をトラクターで走行し、急角度での転倒の危険性を体感する設備です。
事故を防止するには、具体的な事故事例、ヒヤリハット情報を、無理やりにでも普段から定期的に見るようにするのが一番だと思います。
講義で紹介された事故事例集は、事故原因が詳細に調査・分析されていて、かなり参考になりそうです。
農林水産省「こうして起こった農作業事故」
私が以前勤めていた会社は建設業で(私の仕事は新規事業部門のため全く異なる業種でしたが)、グループ会社では毎月何 件もの事故が発生していました。「安全会議」が各部署で毎月実施され、その月に発生した事故内容が説明され、自分達の職場の危険箇所について話し合いました。
私の職場は事故が起こりにくい環境だったので、毎月の安全会議が最初は面倒であまり真剣に取り組んでいませんでしたが 、それでも継続していると、職場のちょっとした危険箇所に目がいくようになり、皆で改善しようとする習慣がついてきま した。
東日本大震災の際には、安全対策の重要さが身に染みました。本社の安全担当者に指摘されて、事務所内の大きな書棚などの転倒防止工事を震災直前に済ませていたおかげで、メンバー全員がけがをせずにすみました。
講師のお話の中で、以下の二点が最も印象に残っています。
・普段気づいた危険や要望を書面にして、機械メーカーに送りつけてください。
行政側からよりもユーザーからの意見の方が効果があります。仲間を事故から守ることにつながります。
・農作業で最も優先する業務は「安全」です。
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