初ヨトウムシから考える 病害虫は天災か?
4月中旬で早くもヨトウ発見。ため息が出ちゃうー。
ヨトウムシは元々茨城では越冬しなかった。春以降に暖地(千葉の南部など)からジェット気流に乗って飛来し、夏は夏眠。秋口から大繁殖というのが通常のパターン。こちら参照。
ところが最近ではポツポツと越冬しているのがあちこちで観察されている。ウチの畑にいるのも越冬組だろう。こんなに寒い冬なのに。
温暖化やヒートアイランドによって越冬できるラインが北に伸びている、ということもあるだろうが、より寄与しているのは周年でアブラナ科(ヨトウの大好物)を栽培している圃場が増えていることではないかと思われる。施設栽培も多いし。
ずいぶん前になるが、記事にしたことがあるので再録。
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まずは大元の2007年10月の野の扉さんの記事コメントからの抜粋。
- ハスモンヨトウは、本来南方系だったのに、施設の中で増えて、だんだん北上してきたのだ、という話をどこかで読みました。(中略) この辺昔は8月から9月はじめにはキャベツがとれなかったのに、今は、夏中どこかの畑にキャベツがある(慣行だから、ネットなし)ようになっていて、(たぶん)アブラナ科が好きなヨトウムシにとって、とてもよい繁殖地になっているのでは、と思われます。-
以下はそれに対して僕が書いた記事「病害虫大発生は天災とは言い切れない」。2007年10月20日付(5年前!)
これは重要な指摘である。病気や虫は,宿主の規模が空間的にも時間軸上も大きければ大きいほど生存確率が高くなる。したがって同じような野菜の周年・大量栽培はそれを宿主とする病原菌や虫の生存を助長する。今の農業の発展は,人間が虫を飼ってしまっているという状況を生み出しているのではなかろうか。
ヒトの病気でも同じで,たとえば麻疹などは一つの個体に1週間程度しか棲めないわけだから,麻疹菌が次から次へと感染して生き延びるためには一定の人口密度が必要である。産業が発達して一定の規模の都市が生まれるまではこういう病気は散発的にしかなかったことが分かっている※注。
農業の中でも総合的防除(IPM)という考えが広がっており,害虫個体群を動的に把握していこうという研究が進んでいる。自分の畑だけを見るのではなく,一定の面積と時間を考慮して病害虫を観察しないと分からないことも多い。
僕のような小規模農業でも,できるだけ切らさず一年を通して野菜をつくっているので,畑にはいつも何かが植わっている。いくら輪作をしていると言っても科を越えて寄生する虫や病気もいるわけだし,残渣の処理も十分ではないのでやはり「飼って」しまっているのだろう。
国際経済学で「小国の仮定」という用語がある。自国の経済規模が相対的に小さく,その経済活動が外国の経済活動に大きな影響を与えることはないという仮定の事である。自分の畑が一方的に被害者だと思うのはまさにこの小国の仮定である。自分も病害虫を増やすことに一役買っているという認識が必要だろう。
※2012/04/20注 たとえばこちら参照。このリンク記事によればメソポタミア都市文明以降 麻疹が定着した。記事中の「産業」は「文明」とするのが適切だった。
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「害虫」と簡単に呼んでしまうが、天から降ってきた外部要因ではないということだ。小規模であろうが、有機農業であろうが、害虫を増やす側に加担していることを忘れてはいけない。
トマトの黄化葉巻病のように地域全体で封じ込めないとどうしようもない恐ろしい病気もあるのだ。
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