「鮮度」を改めて考える
生鮮野菜の味を決めるのは、栽培時期・品種・鮮度の三要素が圧倒的。
これは、僕が繰り返し主張していることです。詳しくは、『キレイゴトぬきの農業論』(新潮新書)参照。
この三つを追求するために、基本的に露地・直販という縛りを設けた栽培に絞っています。強みに絞ることは、同時に弱みを捨てること。
昨期を広げて安定供給を図ることも、収量を追求して生産コストを抑えることも諦めています。
そんな旬の露地野菜は、どこで食うのが美味しいのか?
答えは明白で、畑で食うのが圧倒的に美味い。しかも、僕の解説の下で、食べる人が自分で採って食うのが美味い(はず)。
「畑で食うのが一番美味い」は、プロの料理人を含む、ほとんどの農園への来場者が証言してくれると思います。
「収穫してすぐに直送方式」で買ってくれているウチのお客さんの元へは、市場流通の物に比べればずいぶん採れたてで届いているはず。
それでも、畑で食う方がずっと美味い。畑の「鮮度」を100とすると、宅配便の一日でもずいぶん落ちてしまう。
流通の分野では、「鮮度保持」というのは、包材を工夫したり、予冷をかけたりして、輸送中の劣化を食い止めることだと思われています。
本当はそうではない。鮮度を落とすのは時間です。味だけでなく、香りも食感も経時劣化する。日ではなく時間単位で。
もう一つ、あまり指摘されない品質劣化の原因があります。人の手が触ることです。触れば触るだけ野菜は傷む。流通の過程だけではなく、農園の中でも野菜への接触回数は少ない方がいい。
僕は、畑から玄関までが農業、と定義しています。
「宅配便」とか「直販」というのは、その手段に過ぎません。
畑で生きている物を、いかに短時間で、人の手に触れずにお客さんの元に届けるか。
栽培、業務、出荷の体制が整ってきた今、もう一歩鮮度の階段を上がりたいと思っています。
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