野菜の採り時 オクラ編
先日の「おいしい畑びより」の放送の中でも触れた野菜の採り時の話。番組の中では、若すぎるピーマンは苦いという話が出ていましたね。
野菜の味を決める3大要素は、栽培時期、品種、鮮度ですが、最後にどのタイミングで採るかというのは実はとても大事な要素です。
特に成り物は毎日どんどん変化します。たとえば下のオクラ。手のひらの上の一番左の小さな物は1日から1日半で右の大きさになってしまいます。
ちなみに手袋をしているのは、オクラのかゆみから手を守るためです。素手で収穫を始めようものなら,5分もしないうちにかゆみでのたうちまわる事になります。
大きさが味や食感にどう影響するのか、中を割ってみるとよくわかります。
右の大きい物はタネが大きくしっかりしてきています、実を割る時もパキっと音がして、皮がしっかり厚くなっているのが分かります。もう一日置くと筋っぽくなってしまって食べられません。
左の小さい物はまだタネが小さいです。皮も柔らかく歯ごたえがほとんどないくらいです。
たった一日の違いで、と思うかもしれませんが、寿命が短い野菜達にとって1日は人間の数ヶ月から1年に相当します。時の重みは生き物によって大きく違うのです。生物学者 本川達雄さんの「ゾウの時間 ネズミの時間」のような話ですね。(http://www.athome-academy.jp/archive/biology/0000000104_all.html)
一般に野菜は若採りすると繊維が少なく柔らかい食感です。味は未熟で単調になります。ピーマンなど、物によってはまだ苦かったりします。
一方大きくなって来た物は固く繊維質になる事が多いです。水分が少なくなるものもあります。味は熟して複雑になります。
野菜の種類によって、どの生育ステージで採るものなのかは異なります。たとえば同じカボチャの仲間でもかぼちゃはしっかり熟して食べますが、ズッキーニは若採りしますよね。
そして同じ野菜でも、どのタイミングで採るかが重要になってきます。もちろん通常この大きさでという目安はある訳ですが、「このタイミングが味と固さのバランスがいい!」という物を見つけ出すのは栽培の大きな楽しみです。上述のオクラは一般に流通しているよりちょっと大きめで採った方が味が深く美味しいと思います。
さらに面白いのは、植物の状態によってベストな採り時が異なる事です。生育前半で木が若くて元気な時と、生育後半で木が疲れてくる時期ではベストな大きさは異なります。物理的な大きさだけでは判断できないのです。
この辺りは言葉にするのが難しいので、毎日収穫しながらよく観察するしかありません。若い頃は自分も「成り物の収穫は初心者には無理!」と息巻いていましたが(笑)、それは錯覚でした。今の農場スタッフはすぐにポイントに気づき、教えなくてもタイミングを考えるようになります。
「愛情」という言葉は僕にはしっくりこないのですが、作物に寄り添って観察する事で見えてくる物があります。
こちらは今年豊作の予感の秋ズッキーニ。そのうち取り上げてみましょう。
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